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DXという言葉を耳にするようになってからかなりの年月が経ったように感じます。しかしながら、周りの企業さんの話を聴いたり、見たりすると、DX化が上手く進んでいないように思います。100年続く友人の企業では、「営業で日程を調整するのに、ホワイトボードに各自の予定を書き出して空いてる日程を確認する。」という話を聴いて正直かなり驚いたのを覚えています。
そもそもDXって何?
DXという言葉は一人歩きしている感があり、人によって解釈が違うことがあるので、結局なんなんだろう?となってしまいます。
私は、「デジタル技術を活用して自社の競争力を高めること」という風に考えてます。よくある勘違いとしては、業務効率化やコスト削減することだと認識していることです。DXは、ITツールの導入でも、デジタル化することでもなく、企業としての競争力を高めることです。
日本の状況|世界デジタル競争力
スイスの国際経営開発研究所(IMD)が、世界デジタル競争力ランキングを発表しております。
世界デジタル競争力とは下記です。
デジタル競争力ランキングとは、IMDが策定・公表しているデジタル競争力に関する国際指標であり、国によるデジタル技術の開発・活用を通じ、政策、ビジネスモデル及び社会全般の変革をもたらす程度を分析し、点数とランクを付けている。
デジタル競争力ランキングでは、デジタル競争力に影響を与える要因を「知識」、「技術」及び「将来への備え」の3つに分類し、各要因に関する52の基準・指標に基づいて算出される。
総務省|令和3年版 情報通信白書|国際指標におけるポジション. 総務省,
2023年のランキングの上位10位は下記です。
順位 | 国 | 2022年の順位(対前年比) |
---|---|---|
1 | アメリカ | 2(↑1) |
2 | オランダ | 6(↑4) |
3 | シンガポール | 4(↑1) |
4 | デンマーク | 1(↓3) |
5 | スイス | 5(±0) |
6 | 韓国 | 8(↑2) |
7 | スウェーデン | 3(↓4) |
8 | フィンランド | 7(↓1) |
9 | 台湾 | 11(↑2) |
10 | 香港 | 9(↓1) |
日本は過去最低の32位となっており、年々ランキングの順位を落としています。「知識」では28位、「技術」では32位、「将来の準備」が32位という結果となっています。日本の主な課題として挙げられているのは、国際経験、デジタル技術、機会と脅威に対する迅速な対応、企業の機敏性、ビッグデータの活用と分析などが挙げられています。
2025年の崖
経産省がDXを進めないと「2025年以降、年間最大12兆円の経済損失が生じる可能性がある。」と発表していますが、それが2025年の崖と呼ばれています。
出典:経済産業省「DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」克服とDXの本格的な展開~」
複雑化・ブラックボックス化した古い既存システムに依存していて、データ活用ができないためビジネス環境や市場の変化に対応できなかったり、システム維持管理費が高額化したり、これらの理由から損失が生じるとのことです。
中小企業のDXの勧め
前述したような「2025年の崖」については、中小企業の経営者などは「そもそもシステムなんか使ってないし関係ないや」と思う方もいるかもしれませんが、中小企業もDXを推進していかないと、この先かなり企業の存続がかなり大変になると思います。様々な理由はありますが、いくつかの理由について触れてみたいと思います。
少子高齢化
昨今ただでさえ人材不足で「人が足りない」「いい人がいない」と思ってませんか?みなさんご存知ですが、少子高齢化がこれからも進み、より一層人材不足が問題になると予想されます。
出典:厚生労働省「我が国の人口について」
そんな中で魅力のある企業に優秀な人は集まるでしょうが、ほとんどの中小企業は人材獲得に今より悩まされるのではないかと思います。そんな中、生産性をあげるにはDXが必要になってくるのではないかと考えられます。
IT投資による利益の差
IT投資を行っている企業と行っていない企業の直近3年間平均の売上高、売上高経常利益率を業種別に比較したものである。これを見ると、売上高、売上高経常利益率共に、IT投資を行っている企業の方が、行っていない企業に比べて水準が高いことが分かる。
出典:中小企業白書 2016「中小企業におけるITの利活用 第2章」
情報は古くなってしまいますが、上記にある通り、IT投資をしている企業としていない企業では、売上や利益率に差が出ているという調査結果が出ています。
中小企業の強みをより強化できる
中小企業の強みとしては、「意思決定の速さ」や「経営の柔軟性」などが挙げられます。DX化が進むと経営判断に必要な情報が集約されるので、より早くより正確性の高い経営判断ができるようになり、企業を取り巻く周囲の環境の変化や市場の変化に迅速に対応することができるようになります。
他にもDXを進めた方が良い理由はありますが、これらの観点からも、IT導入やDXを勧めた方が良いのではないかと考えられます。
中小企業のDX化が進まない理由
中小企業のDXが進まない理由や原因もいくつか考えられますが、主に3つ挙げさせていただきます。それは、1「知識不足」、2「人材不足」、3「資金不足」です。
知識不足
少子高齢化が進んでいますが、経営者層の高齢化もDX化が進まない理由の1つとして取り上げられます。高齢者に限らずですが、特に高齢者はデジタル化やITに対して拒否反応を示す人が多いと思います。今の経営者の平均年齢は63.7歳と言われています。
人口減少と少子高齢化が進むなか、社長の平均年齢は2023年に63.76歳(前年63.02歳)に伸びた。前年を0.74歳上回り、調査を開始した2009年以降で最高を更新した。また、70代以上の社長の構成比が35.49%と年代別で最も多く、事業承継の遅れも浮き彫りになった。
出典:東京商工リサーチ「https://www.tsr-net.co.jp/data/detail/1198339_1527.html」
20〜30代であればパソコンなどに慣れ親しんでいると思いますが、50歳以上となれば20代の頃には会社にパソコンがなかったという人も多いです。さらに60代となればデジタルに不慣れな方が多いのも当然です。
経営者の高齢化により企業のトップのITリテラシーの低さから、DXの必要性を感じていなかったり、ITツールを導入するとどのようになるのか?などのイメージができず、DX化が遅れているのだと思われます。
また、従業員の高齢化もDX化の妨げの原因になっている場合があります。新しい取り組みやITツールの導入により、今までの作業のやり方と変わってしまうのに抵抗を感じる方も少なくありません。これにより、スムーズにデジタル化が進まず業務の効率化も中々できない企業もあります。
DX人材不足
既に人材の確保に悩んでいる中小企業が多い中で、DX人材の確保というのは難しいと思われます。
DXを進める上での課題を尋ねたアンケート結果として、2位と差をつけて1位なのが「人材不足」です。
出典:総務省「デジタル・トランスフォーメーションによる経済へのインパクトに関する調査研究」
数少ないDX人材は大企業に雇用されることが多く、中小企業ではDX人材の確保が難しい状態です。
国としては、企業のDX推進のために必要な業務に順応できるよう、従業員の知識やスキルを習得できるように助成金などを出しています。
資金不足
DXを進める上での課題の2位として挙げられているのが、「資金不足」です。そもそもITリテラシーが低いので、どうなれるかイメージもできなず必要性を感じられないものに予算を確保することはないと考えられます。
現在では、資金不足解消のため、「IT導入補助金」や「中小企業省力化投資補助金」などの補助金があります。
中小企業のDXを進めるには!?
中小企業のDXが進まない理由を挙げましたが、では実際に中小企業のDXを進めるにはどうしたら良いのでしょうか?私としては、次の3つが必要だと思います。1『「DX化によりどうなれるか?」をイメージしてもらうこと』、2『小さく成果をすぐに感じられることをする』、3『補助金などでコストを抑える』。
「DX化によりどうなれるか?」をイメージしてもらうこと
資金不足の箇所でも述べたとおり、「どうなるか?」をイメージできないと、予算も確保しませんし、DX化を進めようとなんてしません。なので、自社の業務フローや課題・文化などを理解してしっかりアドバイスをしてくれるような方に相談するのが良いと思います。中には、扱っているツールやシステムありきで話をするIT業者がいますが、「そもそもそれが本当に必要なものなのか?」「最適な施策であるのか?」などはわかりません。しっかり自社について知ってもらい、その上で最適な方法をアドバイスしてくれる方を探すのが良いと思います。
成果をすぐに感じられる小さいことからやってみる
「スモールスタート」「クイックウィン」という言葉がありますが、「小さく始めてみる」「すぐに効果が出ることをする」などの意味です。この言葉通り、先ずは、小さいことから、すぐに効果が出ることをしてみるのが良いと思います。本来であれば、全体像の設計をしてからDXを進めていくのが望ましいかもしれませんが、小さいことでも効果を感じればITやDXについての見方も変わり、率先してDXを進めるようになる可能性があります。
補助金や助成金を活用してコストを抑える
DX推進のため、補助金や助成金がいくつか出ています。資金不足でも、これらを活用してコストを抑えてDXを推進することができるのではないでしょうか?デメリットとしては、補助金の申請や交付決定までに時間がかかること、審査に落ちること、などがあります。しっかり計画やスケジュールを立てて活用してみてはいかがでしょうか。