PANTONE指定と特色について

ウェブデザイナー YUMI HAYASHI
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弊社でパッケージデザインを担当した商品ラベルの入稿にあたって、クライアントと印刷会社との打ち合わせに同行させていただきました。
その際は特色ではなくCMYK印刷だったのですが、PANTONEのチップを使って色を決定し、印刷会社に色校正をしていただくことになりました。私は紙媒体や印刷についてあまり知識が無かったため、非常に勉強になる経験でした。
そこからさらに詳しく調べ、特色とは何?どういう時に使えばいいの?などといったことをまとめてみました。

そもそも特色って何?

特色印刷とは、特別に配合したインクを使う印刷のことです。
4色カラー印刷(CMYK)に対するものとなりますので、2つの違いを見ていきましょう。

プロセスカラー(CMYK)

一般的にIllustratorなどのソフトで印刷物をデザインする際、こちらのCMYKでデータを作成します。ご家庭のプリンターと同じように、シアン・マゼンタ・イエロー・ブラックの4色のインクを配合し様々な色を表現します。CMYK印刷では表現できない色、苦手な色があり、具体的にはパステルカラーなどの薄い色、鮮やかな蛍光色、金銀銅などのメタリックカラーが該当します。また印刷機によっても微妙に色合いが変わってしまうことが多いです。

スポットカラー(特色)

特色は、絶対に変わらないこの色!を番号で指定出来ます。CMYKが4色のインクの掛け合わせで色を作るのに対し、特色は指定された色のインクをあらかじめ配合しておき、そのインクを使用して印刷します。そのため印刷機による色の違いが起こりません。

特色を使った方がいい場合

特色印刷はイメージ通りのきれいな印刷ができますが、コストはどうしてもCMYK印刷に比べると嵩みます。全てを特色にすることは難しいのですが、どのような場合に使うべきでしょうか。

色の違いを起こしたくない時

CMYK印刷によって色のブレがあると印象は大きく変わってしまうことがあります。特にコーポレートカラー、ロゴ、パッケージデザインなど、間違いなくその色を表現したい場合は特色を使うのが良いでしょう。
Ludiusのロゴにも特色が指定されています。コーポレートカラーのルディウス・グリーンはDIC-216です(DIC-〇〇と言うのは色を指定する番号です、後ほど詳しく説明します)。青みがかった鮮やかな緑色で個人的にも非常に好きな色です。

特色でしか表現できない色を使う時

金・銀・銅

金・銀・銅などのメタリックカラーは特色インクでないとどうしても表現できません。特別な質感が出せるのでキラキラした高級感を演出したい時には金などの特色印刷を検討するのも良いと思います。

CMYKで表現できない色

先述の通りCMYK印刷には表現できない色、苦手な色があります。特に淡い色・明るい色・鮮やかな色などは暗くくすんだ色味になってしまいます。これらの色をイメージ通りに印刷したい場合は特色を選択すると良いでしょう。

特色はどうやって指定するの?

コーポレートカラーやロゴを使う時など最初から色番号も決まっている場合は問題ありませんが、実際にはCMYKでデザインを作成した後で特色印刷を使いたいという場面もあると思います。CMYKカラーから特色を決める際、以下の方法が考えられます。

カラーチップによる色指定

特色を決める際、カラーチップとも呼ばれる色の見本帳を使用します。単語帳のように束ねられたカードに様々な色が印刷されており、各色には番号が振られています。
モニターで見る色合いはRGBで表現されておりどうしても差異が出てしまうため、このようなチップを使って印刷物のイメージに近い色を決定していきます。

これはPANTONEのカラーチップです。

よく使われる色見本にPANTONEやDICといったものがあります。これらは特色インクのメーカーです。異なるインクのため番号の互換性はなく、それぞれに独自の色番号が付けられています。

PANTONE→パントーン社(アメリカ)
DIC→DIC株式会社(旧大日本インキ化学工業)
TOYO→東洋インキ製造

などといったものがあり、特にDICは日本の企業なので国内ではよく使われています。
先ほどLudiusのコーポレートカラーはDIC-216が指定されていると書きましたが、これもDIC社の色番号が指定されています。

Photoshopのカラーピッカーを使用

Photoshopの機能を使うとCMYKの色をPANTONEやDICカラーでの類似色に変換することができます。あくまでソフトの演算による処理のため絶対に間違いないとは言い切れませんが、非常に便利な機能です。すでにCMYKでデータを作成しており、今の色のまま特色印刷にしたい場合などに使えます。

測色計を使用

私は知らなかったのですが、測色計という物体の色を測定できる機械があるようです。ポスターやパッケージなど気に入った色に印刷されたものを測色計で測定し、その色を指定するという方法もあるかもしれません。

LudiusカラーをDIC→PANTONEに変換してみる

LudiusのコーポレートカラーはDIC-216が指定されていますが、私の手元にあるカラーチップはPANTONE社のものです。色はPANTONEで指定してくださいと言われる場合も考えて、LudiusカラーをどうにかPANTONEで表現できないでしょうか。
厳密に言うとDIC社とPANTONE社のインクに互換性があるわけでは無いので全く同じ色を指定することはできませんが、いくつかの方法で類似の色を選ぶことはできます。

まずはDICのカラーチップとPANTONEのカラーチップを見比べて目視で選ぶ方法。印刷物同士で選ぶため色の違いが起こりにくくイメージもつきやすいですが、DICのカラーチップを持っていないため今回はできません。
次にPhotoshopのカラーピッカーを使って変換する方法。CMYKカラーを特色に変換できると書きましたが、DICからPANTONEへの変換も可能です。今回はこちらを試してみます。

手順

まずはPhotoshopで適当に新規ドキュメントを作成します。
デフォルトでは黒になっている描画色をダブルクリックし、カラーピッカーを開きます。

カラーライブラリをクリックし、ライブラリを「DICカラーガイド」に設定します。

左に表示されている色のどれかを選択した状態でDIC番号(今回は216)を入力すると、指定のDICカラーが表示されます。

これでDICの特色ができました。ひとまずDICカラーで四角を作っておきました。

もう一度カラーライブラリを開き、DIC-216を選択したままライブラリを「PANTONE solid coated」に変更します。

すると先ほど選択されていたDIC-216に近い色が自動的に表示されます。右のボックスを見るとわかりますが完全に同じ色という訳ではありません。少し薄い感じがしたので下の3278Cと迷ったのですが、

こちらだと逆に濃くて色味も少し異なる感じがしますね。微妙なのですが、今回は上の3268Cに決めました。

このように、完全に同じ色を選ぶことはできませんが近い色をPANTONEカラーで表現することができます。

PANTONEのカラーチップではこちらの色になりました。
実際に印刷された色を手元で見るとまた印象も異なります。

同じ手順でCMYKからPANTONEへの変換、CMYKからDICへの変換も可能です。

まとめ

Photoshopのカラーピッカーを使うと非常に簡単に特色が指定できることがわかりました。特色印刷でない場合もPANTONEやDICの色番号を指定して、その色に近づけるように色校正してもらう場合があります。モニターによっても色の見え方が変わってしまうため、共通認識としてのPANTONEなどの色指定は必要不可欠なのだなと感じました。

弊社ではパッケージデザインやロゴデザインについても承っているため、特色を使った方がいいと思われる場合があれば検討して提案していきたいと思います。

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書いた人

ウェブデザイナー YUMI HAYASHI

千葉県出身。Webデザイン・グラフィックデザイン・マーケティング・ディレクションなどに携わっています。キャンプとお酒とボードゲームが好き。 Webディレクション検定取得(2023年12月)宣伝会議コピーライター養成講座基礎コース 金の鉛筆12本(2023年3月〜9月)

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